Monthly News Letter

香月展に寄せて

皆さまいかがお過ごしでしょうか。
銀座柳画廊では先日まで「生誕110年香月泰男と現代日本近代洋画展」を開催させていただきました。
ご高覧下さり、誠にありがとうございました。

同じ時期に神奈川県立美術館でも「生誕110年 香月泰男展」(9月18日〜11月14日) を開催しておりましたので最終日にお伺いしました。

香月先生は黒と黄土色の色調で、光沢のないごつごつしたマチエールに描かれているシベリア・シリーズの作品が印象的ですが、今回の展示を拝見し色彩感覚に優れた作家さんだと改めて思いました。
特に印象に残ったのはシベリア・シリーズの「青の太陽」という作品です。(作品はこちらからご覧頂けます。)
巣穴から空を見上げる蟻の視点で描かれており「自分は蟻になって、穴のそこから青空だけをみて暮らしたい」との香月先生の解説文が添えられておりました。

黒と黄土色の中の青色がとても鮮やかで美しく感動しました。
青にも様々な青があり、隣り合う色によっても観え方が異なりますが、その中でも一番美しく見える青で描かれたのだと思いました。

私は大学時代に油絵を専攻していました。その時の恩師から「彩度の低い色調を使える人は彩度の高い色の使い方も上手い」と聞いたことを思い出しました。
当時、意味はわかりませんでしたが、今回、香月先生の展覧会を拝見し、まさしくその通りだと感動しました。
また、黒と黄土色の最低限の色しか使わずにシベリア抑留の苦しい体験を表現できるのは本当に凄い才能だと思いました。

シベリア・シリーズ以外の香月先生の色彩豊かな作品もとても見応えがあります。
今後、巡回展もありますのでご興味ある方は是非ともご覧ください。
(日程は変更の可能性がございますので各美術館のHPでご確認ください。)
新潟市美術館(2021年11月27日―2022年1月23日)
練馬区立美術館(2022年2月6日―3月27日)
足利市立美術館(2022年4月5日―5月29日)

また銀座柳画廊でも来年開催予定の岡野博先生の展覧会の中で香月泰男先生と合わせた企画を開催予定です。
詳細が決まり次第、告知させていただきます。お楽しみに。

Author:
須藤 直実
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