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秋の旅の話 2026.11.01

銀座柳画廊スタッフの加藤です。
今回は先週末に行った旅の話をします。
木々の色づき始める秋時雨の10月も末。
母、姉、私の3人は、父母それぞれの故郷である岩手一関を訪れました。
私たちが両親の故郷を訪ねるのは実に25年以上ぶり。
8年前に父が亡くなって以来、父の実家を訪れるのも当然初めてのことです。
今回の旅の大きな目的は、母と共に両親の実家を訪ね、祖父母の仏壇に手を合わせることでした、
道中の車内で私たちは、町の風景がどれだけ変化していることかと話します。
姉と共に曽祖父や親戚との思い出を語り合いながらも、
当然記憶の中のその風景は大方残っていないであろうと想像をするのでした。
駅へ到着した私たちは、母の弟である叔父の車で田舎へと向かうのですが、
途中、厳美渓の長い歳月がつくり上げた岩肌、雄大な北上川の水流を窓から眺めながら、
どこか時空間を移動しているかような錯覚を私は覚えていました。
そして懐かしい土地に足を踏み入れた途端、かつてと何ら変わりない記憶のままの風景を目にします。
驚くことにそこには、以前と同様の時間と空気の流れる空間が存在しており、
さらにそれは、私の知る筈のない両親の幼少期の暮らしの記憶までをも静かに蘇らせたのです。
懐かしい香りに包まれ、仏壇にそっと手を合わせながら私は、
時代を超えそこに存在する物語、またそれにつながる自分の記憶を確かめ
その時を噛み締めるのでした。
その後、足を運んだ平泉中尊寺でも思うことは、
仏教美術の美しさも去ることながら、長い年月を経て変わっていないであろう
その厳かな祈りの空間の神秘。
900年もの間祈りを捧げた人々と、まるで次元を共有しているかのように感じたのは
はたして幻想でしょうか。
今旅は、祖父母に手を合わせ感謝すると共に、悠久の時と先人に思いを馳せ、
壮大な流れの中の自らのルーツを確認させられる有意義な時間旅行となりました。
美術品と向き合う際も私たちは、外観の美と共に作品の生まれた背景や歴史、
今日まで伝えられてきたその物語に心を動かされています。
そしてその想いを先人、また子孫らと共有し鑑賞している時、
私たちは絵画を通し一種の時間旅行をしていると言えるのかもしれません。
