Monthly News Letter

北の春の話

銀座柳画廊スタッフの加藤です。
暦の上では疾うに夏ですが、ひとつ季節外れに春の話をさせてください。

プライベートな話にはなりますが、今年のゴールデンウィークは4月末より5月に掛けて
北海道小樽に滞在しておりました。道内入りした当初の町の気候は到底春とは言い難く、
日中でも気温は6度程度、念の為持ってきた厚手のダウンが手放せない数日を私は過ごします。
しかし肌寒い空気の中、山の雪解けと共に蕾を膨らませる桜、徐々に近づいてくる春の気配には
胸を高鳴らせ、思いがけず雪国で春を待ち侘びる体験をすることとなりました。
そして5月を迎えるとともに気温は一気に上昇しますが、長い冬を経て開花したその桜の花々には
関東で感じるそれとは異なる感慨があり、町全体を流れる歓喜の空気を私は肌で感じたのです。

今回私が雪国の春を通し強く想うことは、彼らの春への熱い切望は雪の降らない地域の思いとは
比較にならない程強く、それだけに待ちに待った春の訪れは人々に大きな意味を持つということ。
今更言うまでもないことなのかも知れませんが、実際に体感したことで
改めて日本人にとっての春の意義を大きく振り返るきっかけとなったのでした。

春は日本の絵画においても多くの作家によって古くから取り組まれている重要なモチーフです。
しかしそこに描かれるものには、辛い寒さをじっと耐え忍びながら想う古来より普遍的な人々の
春への強い憧れと願いがあり、決して純粋な美だけではないということを改めて強く感じさせられる
貴重な経験となりました。

さて6月は弊社銀座柳画廊でも大きくスタッフの入れ替えがございました。
そこを叙情ときれいにまとめる気はございませんが、出会いや別れ、変化、進化もまた必然で、
遷り変わりの流れを前向きに皆様と共に楽しんでいけたらと思います。

現在銀座柳画廊では、新スタッフと共に7月2日からの長縄眞兒展に向けて準備を進めております。
長縄眞兒先生は日本で絵画を学んだ後、70年代後半にヨーロッパへと渡り、その後スペインマラガにて
40年以上滞在し制作を続けておられる異色な画歴の作家でもあります。
昭和後期の日本美術を基軸に異郷の地で描く長縄先生の作品は、鮮烈な発色に光豊かな地中海を思わせる一方、
半抽象的な作風とその真摯な姿勢に物懐かしさを覚える方も少なくないのではないでしょうか。
期間中は長縄先生も帰国しご在廊いただく予定です。
是非貴重なこの機会に、皆様お誘い合わせの上ご高覧賜りますようお願い申し上げます。

展覧会詳細↓
【長縄眞兒展】
開催期間:2025年7月2日(水)〜7月11日(金)
営業時間:平日 10時-19時 土・日 11時-18時

Author:
加藤 薫里
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